「それを話すとちょっと長くなるけど、いいかしら?」
「……いや、話さなくていい。これは俺の問題だから」
高坂は呆れたとばかりに目をぐるっと回すと、「頭固いわねー」と含み笑いで呟く。
「周りのアドバイスに耳を貸すってこと、少しは覚えたら?」
「ずいぶん辛口だな」
「だって後二日だもの。思ったことは遠慮なく言わせてもらうわ」
与崎が渋々頷くと、高坂は一呼吸置いてから静かな声で言った。
「突然だけど、ひとみ君は自分以外の人のために願いを使った依頼人を見たことある?」
与崎が真っ先に思い付いたのは、千鶴のことだった。
与崎に気を遣って願いを取り下げ、それが仇となって殺されてしまった女性。
千鶴のことを思い出すと、いつも胸が革のベルトで締め上げられているかのようにぎゅっと苦しくなる。
それも表情に出てしまっていたようで、高坂は「辛いことでもあった?」と心配そうに言った。
与崎は熱くなった目頭を指で押さえ、何とか横に首を振る。

