ゴールデンウィーク最終日。
夏に向けて日ごと暑さが募るような日に、死んだ父の部屋を整理し始めたのが全ての元凶だ。
母親を生まれてすぐに亡くした美弥にとっては、唯一の肉親だった父。
その父が水死体となって発見されてからもう三年になる。
長いこと放置していた父の部屋がようやく気になり始め、遂に今日片付けに着手したのだ。
片付けたら念願の書斎として再利用してやる、と思い立ったものの、元雑誌記者の父の部屋は資料やらメモやらのせいでまんべんなく散らかっている。
……それに加えて、美弥の私物もいくつか放置されている。
そのせいもあって、今や机の上や床の上、果てはベッドの上までもが物で溢れかえってしまっていた。
早くも嫌になりそうだが、今止めたら後五年は手を付けないだろう。
「本当に片付けないんだから、親父は」
自分もこの部屋を散らかしていたことは棚に上げて、美弥は小言を呟き続ける。
「そういえば、親父がいた頃はリビングも酷いことになってた気がするなあ」
美弥は父親と暮らしていた頃の家の惨状を思い出そうとしたが、頭に靄がかかったようで上手くいかない。
仕方なく美弥は机から飛び降り、紙の山をかき分け始めた。
「早く片付けないと」
まるでゴミ部屋の見本みたいな部屋だ。
鞄が横倒しになって積み上げられていたり、テーブルクロスがずたずたに破れたまま放置されていたりする辺り、父は物を大切に扱うことを知らなかったのではないかと疑ってしまう。
身元保証人になってくれた叔父夫婦には、せめて片付けも手伝って欲しかった。