落ちこぼれ悪魔の扱い方

灰田の鋭いカウンター。

与崎が「それは……」と口ごもっていると、灰田は勝ち誇ったように口角をつり上げた。


「誰も知らないでしょ? だからみんな『解放』なんて曖昧な言葉使ってるんすよ」

灰田はニヒルな笑みを張り付けたまま、「ね、アンリ先輩」と高坂の手を両手で包み込むように握る。

高坂は一瞬身を跳ねさせたが、灰田は構わず甘い言葉を囁き続ける。


さながら、本物の悪魔だ。


「もう少し悪魔続けてても、いいんじゃないすか? どうなるか分かったもんじゃないし、悔いが残らないように謳歌しましょうよ。悪魔の生活を」


灰田の笑顔を、与崎は知っている。

獲物を逃がさない、女郎蜘蛛のような束縛の笑顔。

自分の命を人質に取って、それでもダメなら相手の希望を徹底的に潰して、蜘蛛は少しずつにじり寄ってくる。


高坂、口車に乗っちゃいけない。

こいつはただ、お前をこの黒い牢獄に引き留めていたいだけだ。


高坂はしばらく灰田を見つめ続けていたが、ゆっくりと深紅の唇を開いた。


「律君の言ってること、よく分かったわ」


灰田の顔がぱっと昏く輝いた。