与崎が目を向けると、灰田はいつもの軽薄な笑みではなく、引き締まった真剣な表情を浮かべていた。
「相手が一番悪いっす」
面と向かって反論されるとは思っていなかったのか、高坂は「そ、そう?」と戸惑って視線を泳がせる。
「でも、あたしさえいなきゃ、その子たちは死ぬこともあたしを殺すこともなかったのに……」
「先輩をいじめなきゃ、そんなことにはなってなかったんすよ。先輩は間違ったかもしれないけど、悪くはないです」
灰田は熱心に語る。
高坂のことになると、時折灰田はこんな様子を見せることがあった。
「律君……」
「俺もそう思う」
二人に視線を向けられ、与崎は軽く頷いた。
「俺が悪魔になったのも、同じような理由だから」
「えー、そうだったんすか」
灰田は、いつもの抜けた口調に戻っていた。
「ってことはやっぱり、殺すつもりはなかったんすか?」
「いや、俺の場合殺意はなかったわけじゃ……。まあいいか。それは置いといて」
与崎は一旦呼吸を整え、高坂の大きな目を見据える。

