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翌日、午後六時五十分。
与崎たちの部屋に、黒い布をかぶせた全身鏡が運ばれてきた。
布を裂くためのナイフと、鏡を割るための金槌を両手に持った男も入ってくる。
部屋に充満する、希望を匂わせた空気。
男が勘づいてしまうのではないかと与崎は不安だったが、それは杞憂だったようだ。
男は特に気にするふうもなく時計を確認している。
与崎はこちらに背を向けている男から、灰田へと視線を移す。
先ほどまでバネ棒外しで足枷をガチャガチャやっていたが、奮闘の甲斐もあり足枷は外れていた。
自由になった灰田の足首は、近くに座る高坂のおかげで巧妙に隠されている。
後は灰田次第だ。
彼が男の不意を突いて鏡に飛び込めば、与崎たちはここから解放される。
辺りは緊迫し、空気が張り詰めてくる。
与崎がゴクリと生唾を飲み込んだとき、鎖の擦れる音に混じって小さな声が聞こえてきた。
「……先輩。ひとみ先輩」
灰田の声だった。
灰田に顔を向けると、彼の全身はガクガクと小刻みに震えていた。

