今度は失敗しない。
与崎は男が見ていないことを確認し、素早くバネ棒外しを掴む。
そして一瞬の迷いもなく、それを袖の中へと滑り込ませた。
「はあ。今日はそれ集めたらもう帰っていいよ」
男はそう言って枷の鍵を取り出した。
バネ棒外しを盗んだことは、バレていない、みたいだ。
与崎はそっと長い息を吐きながら、ひたすら手を動かしてガラスの破片を集め続けた。
大部屋に戻される。
男が出ていくのを待ってから、与崎は袖の裏からバネ棒外しを取り出して高坂と灰田に見せた。
「あー、これなら多分いけますね」
灰田は普段通り長閑な声で言ったが、その口調はどこか浮わついているように感じられた。
「すごい! さすがひとみ君ね!」
無邪気に喜ぶ高坂。
二人だけじゃない。
部屋中の悪魔が、期待を込めた眼差しで与崎を見つめていた。
与崎は声をひそめ、男から聞いた情報を二人に話して聞かせる。
「あいつの話によると、明日、新しい悪魔を呼び出すらしい。狙うならそのときだ」
「明日? 間に合うかしら?」
「間に合わせるしかないだろ」
与崎は勢い込んで言うと、「お前が使え」とバネ棒外しを灰田に渡した。
「え、僕すか」
灰田はきょとんとしている。

