高坂が言った『次のチャンス』は、なかなか訪れなかった。
相変わらず与崎は犬のように壁に繋がれ、時折男の不愉快な視線を浴びるという生活を送っていた。
可動域の狭い手が痺れる。
きつい足枷が擦れて肌が痛む。
変な体勢で寝ているせいで体中がガチガチに固まっている。
「こんな生活、いつまで続くんだろうな……」
与崎が疲れた声で独りごちると、隣の高坂にぽんと肩を叩かれた。
労ってくれているようだが、その手に力は込もっておらず、普段の明るくしたたかな高坂とは大違いだ。
スーツの袖から見えた彼女の肌は驚くほど血色が悪い。
与崎は灰田にも目を向ける。
彼は床に横たわり、身動ぎ一つしていなかった。
悪魔じゃなかったら、死んでいるのではないかと不安になるくらい。
「律君も疲れてるのよ。寝かせといてあげましょ」
高坂の言葉に、与崎は小さく頷く。
他の悪魔はやはり岩のように静まり返ったまま、何も言わない。
限界なのは自分だけではないのだと悟った。

