少し短めだが、あれを枷の穴に差せば、もしかすると……。
「どうしたのかね」
男の不審そうな声で、与崎は我に返った。
「何か気になるものでもあったのかい?」
「いえ、そんなことは」
与崎は即答し、ネクタイピンから視線を外す。
怪しい動きをしてはいけない。
自分だけじゃなく、高坂と灰田の身も危険に晒すことになる。
「そうか。では、酒のおかわりを注いでもらおう」
「……はい」
与崎はボトルを両手で持ち、グラスに近づける。
しかし与崎の心は、どうしようもないほど視界の端のネクタイピンに惹きつけられていた。
あれを手に入れたい。どうしても。
与崎はグラスに酒を注ぎながら、そっとピンに手を伸ばした。
男は気付いていない。
酔ってきたせいもあってか、目を閉じてうつらうつらと船を漕いでいる。
いける。いける。
自分を鼓舞しながら、ゆっくりと、震える手で、ピンを掴もうとする。
しかしその瞬間、男が目を開けた。
与崎は素早く手をボトルに戻すが、男は与崎をじっと見ている。
ピンを盗もうとしたことが、バレたのかもしれない。

