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次の日、与崎は男に呼び出された。
身構える与崎に対して、男は普段と変わった様子を見せなかった。
高坂や灰田のことについては一切触れてこない。
監視カメラは仕掛けられているのに、与崎たちが結託していることに気付いていないのか、はたまた気付いてはいるものの泳がせているのか。
考えても埒が明かないので、与崎はお酌を済ませると部屋の中を観察し始めた。
さすがに男から鍵を奪うことはできないが、枷の解錠に使えそうなものはないか。
針金のようなものが、床やテーブルに落ちていないだろうか。
しかし与崎の期待とは裏腹に、そんなものは見つからなかった。
当然といえば当然だ。
部屋の中には、テーブルと酒のボトルくらいしかないのだから。
いっそのこと酒瓶で頭をぶん殴って、その隙に脱走してしまおうか。
そんな危険な考えが浮かび始めたとき、テーブルの上に転がるピンのようなものが与崎の目に留まった。
洒落た飾りがついているそれは、男のネクタイピンだった。
しかも、今どき珍しい刺すタイプのもの。先端には金属の針がついている。

