落ちこぼれ悪魔の扱い方

軽口を叩いてはいるものの、二人は特に傷痕については何も触れてこない。


与崎はとりあえずほっと安堵し、自己紹介を始めた。


「俺は、もう二年ほど悪魔をやってる」

「ウソ、じゃああたしよりも先輩じゃない」

高坂は信じられないといった表情をした。

「どうしてそんなに続けられるのよ? 悪魔なんて、解放されようと思えば簡単にできるのに」

「……。俺はまだ、本当の意味で人を幸せにはできてないから」

与崎が言うと、高坂は感心したようにため息を吐いた。

「真面目なのね。あたしには、とうてい真似できっこないわ」

「真似しようとも思わないすけどね」

灰田がやれやれとばかりに肩をすくめる。


「それで、先輩。名前はなんですか?」

「俺か。俺は……」

しまった、偽名を考えていなかった。

与崎は咄嗟にそれっぽい名前を考える。


本名は嫌いだ。

女の子みたいな名前なのも嫌だし、親に付けられた名前ってのも嫌だ。

それに何より、色々とフラッシュバックしてしまう。


ひとみ、と呼ばれる度に、父や兄の声が重なって聞こえるのだ。