握った手が冷たくなっていく。
千鶴が生きている証は、与崎のすぐ目の前で徐々に消えていく。
千鶴は助からない。
それを認めたくなくて、与崎は何度も首を振った。
「嫌だ、死なないでくれ……千鶴!」
千鶴は一瞬目を見開いたが、すぐにいつもの微笑に戻った。
「分かってください。悪魔さん」
相変わらず弱々しい声だが、与崎の耳にはかつてないほど力強く聞こえた。
与崎は涙腺が壊れたように涙を流しながら、ただ一途に千鶴を潤んだ瞳で見つめた。
「最期に、素顔を見せてもらえますか」
千鶴に懇願される。
最期、という言葉を否定することは、もう与崎にはできなかった。
与崎は震える手で、ゆっくりと涙に濡れたベールを外す。
現れた素顔を見ると、千鶴は「ああ……」と悲しそうに微笑んだ。
「私と、同じ目だ……」
同情するような口調で、千鶴はか細く呟く。
それからロクに力も入らないであろう左手を伸ばして、割れものを扱うような手つきで与崎の頬に触れた。
「ずっと傷付けられて……そうやって、生きてきたんですか」

