千鶴は仰向けになり、部屋の床に倒れていた。
白髪混じりの黒髪が、死の影を象徴するようにふわりと床に広がっている。
千切れたヘアゴムがすぐ側に落ちていた。
千鶴は気配を感じたのか、たどたどしく与崎に目を向けた。
がらんどうのような瞳に、ほんの少し明かりが灯る。
「悪魔、さん……来てくれたんですね……」
千鶴の開いた口から、一筋の血が流れ落ちる。
それは五日前に見た、目尻から涙がこぼれる様子に酷く似ていた。
「ごめんなさい、私……」
「喋るな!」
与崎は咄嗟に叫び、千鶴の手を取る。
息をするのも辛そうな千鶴に、これ以上の苦労はさせられない。
「待ってろ、病院連れてくから。いや、動かすと辛いか? 救急車か? でも早くしないと、お前が死__」
「もう……遅いと思います……」
千鶴は掠れた声を喉の奥から絞り出し、喘ぐように言った。
「だから最期に、一つ、お願いしても……」
「最期とかお前、何、諦めてんだよ!」
言いながら、与崎の目からはまた涙がほとばしっていた。

