悪魔がお茶を飲み終わるのを待ってから、美弥は尋ねた。
「そういえば、なんでベール付けてるの?」
悪魔は湯飲みから口を離し、素っ気なく「規則だから」と言った。
「なんだ、悪魔って厨二病しかいないのかと思ってた」
美弥がそう茶化すと、悪魔は不機嫌そうにベールの裾を引っ張った。
「偏見持ちすぎだろ。これはあくまでも規定の制服であって、俺の趣味じゃねえから」
「悪魔だけに?」
「面白くないからな、それ」
あっさり切り捨てられ、美弥は言葉に詰まった。
「じゃあ悪魔の長が厨二病なんだね、うん」と苦し紛れに言ってみたが、無視された。
悲しい。
「そんなことよりお前、名前は?」
そんなことよりって……。
一瞬頭にきたが、折角訊いてくれたので渋々答えた。
「前原美弥。美しいに弥生の弥。前原は……分かるでしょ?」
悪魔は「弥生の弥……」と首をひねっている。
「ああ、あれか。禾偏の」
「それは称!」
「あれ、じゃあ弓偏だったか?」
「正解。漢字苦手なの?」
「いや、悪魔が文字を書いたり読んだりする機会ってあんまねえし」
悪魔はそう弁解した。
悪魔が普段どんな生活をしているのか気になったが、別に今訊くような話でもない気がした。

