落ちこぼれ悪魔の扱い方

「あの人に顔をぶたれる度に、お腹を蹴られる度に、私を必要としてくれてるんだなって、実感するんです。私は、この人にとって替えがきかない存在なんだって、思って……」

はっきり言って、気持ち悪かった。


なんで自分を害する人に、そこまで固執する?

どうして逃げられるチャンスを、自ら手放す?


理解できない。本当に。


「でも、これ以上体を痛めつけられると命が危ないんです」

千鶴は淡々と語った。

与崎は愕然としたまま、ひたすら千鶴の話に聞き入ることしかできない。


「先月あまりにも体が怠かったもので、病院に行きました。やっぱり内蔵がかなりやられてるみたいで、ボロボロでした。

……だから私、決めました。こんな不健全な幸せからは身を引こうと」

そこで言葉を切り、千鶴は与崎をじっと見た。

千鶴の瞳から、つっと涙が一筋こぼれる。

「幸せ、だったんですけどね……」


その涙を見たとき、与崎の中で何かが切れた。

鬱屈していたやり場のない怒りが、一気に喉元へと押し寄せる。


「殴られるのが幸せとか、そんな話あるわけないだろ」

気が付くと、震え声でそう口走っていた。