落ちこぼれ悪魔の扱い方

千鶴はきっぱりと告げる。

今までの静かでどこか頼りない口調とはうってかわって、迷いのない声だった。

「あの人には私しかいません。同じように、私にもあの人しかいないんです」

千鶴は与崎をキリッとした表情で見つめた。

それもやはり、今までの弱々しさとは一線を画している。


だが与崎の心は動じない。

千鶴の言動も、利己的な前の二人の依頼人とそう変わらないように思えた。

「……そんなこと言われてもな。つうか、それって結局死んでも記憶消えても同じことだろ」

「全然違います」

即座に否定された。

「あの人が記憶を失ったとしても、きっと私、また彼の元へ戻っていってしまう気がするんです。


でもあの人が死ねば、諦めがつく。この世界のどこを探しても、私を苦しめてやまないあの人はもういないのだから」

千鶴の顔には、染み付いた不幸の塊のような痣が点々と広がっている。

やつれてか細い体は、つまずいただけでポキッといってしまいそうだ。


……それなのに目だけは、恋する小さな詩人のようにキラキラと輝いている。