落ちこぼれ悪魔の扱い方


……やっぱり、俺は間違っていた。


与崎は何も言わず体を起こす。

警戒して拳を握り込む彼を、与崎は鼻で笑った。

「何笑ってんだよ」

彼は気味悪そうに呟く。

与崎は冷静に笑い、こう言った。

「……無かったことにさせてもらう。全部」


与崎の言葉に、彼の表情はみるみるうちに歪んでいった。

「おい、それどういうことだよ!」

顔を真っ赤にする彼から目を離し、与崎は立ち上がってスーツの埃を払う。

「言った通りだ。俺とお前が契約してからの記憶を、関係者の分も含めて全部消す。

そうすりゃ元通りだ。あの子は彼氏と別れないし、いじめられた記憶も失くす。お前も悪魔を呼び出したことは忘れる。それが最善だ」

「何が最善だよ、ふざけんな!」

彼が殴りかかってくる。

飛んできた拳をギリギリで躱し、与崎は鏡の中へと逃げ込んだ。

彼の罵声が、だんだん遠ざかってゆく。



俺は今回、何をした?


二件目の依頼も失敗した後、与崎は自問自答した。

記憶は無くなっても、彼女がいじめられたという事実は変わらない。

悪魔失格だ。

人を幸せにするどころか、不幸にしてしまった。


人を不幸にしちゃいけない。


いつでもそれを念頭に置くこと。

今回は相手の口車に乗せられてしまったが、次はきっと大丈夫だ。