「で、本題。元カノを殺してくれ」
さらりと言われた物騒な願いに、与崎は開いた口が塞がらなかった。
「断る」
そうはっきりと伝えると、明らかに彼は不機嫌になった。
ちぇっと無遠慮な舌打ちをして、与崎を怒りに燃えた視線で見つめる。
「んだよ。てめえ、拒否権あんのかよ」
「人を不幸にするような願いは叶えられない」
「あいつがいる限り、俺幸せになれねーんだけど」
与崎が黙殺していると、男子高校生はいかに自分が不幸かを怒涛の勢いで捲し立て始めた。
相手は彼が所属するサッカー部のマネージャーで、彼女の方から告白してきたこと。
部内恋愛禁止の掟を押し切って付き合い始めたこと。
陰口を叩かれても不遇な扱いを受けても、彼女との付き合いをやめようとは思わなかったこと。
……それなのに、彼女はあっさり別の男に乗り換えたこと。
後に残ったのは周囲からの冷たい目だけだということ。
確かに、事情を聴く限りでは相手が悪い。
彼が話を盛っていなければの話だが。
「なるほど。お前の事情は分かった」
「なら、殺してくれるよな!?」
彼は目を輝かせたが、与崎は首を縦には振らなかった。

