ふと視界の下を桃色のものが掠めた。
美弥はそちらへと目を移す。
床に落ちているのは、白い恐竜が描かれた円形のチャーム……与崎にもらったネックレスだった。
美弥の首からチェーンが垂れ下がり、チャームが床に着いている。
そういえば、付けっぱなしだった。
そこまで頭が回っていなかったのだ。
ねえ、与崎……。
美弥は心の中で問いかける。
まだ、終わりじゃないよね?
自分だけが悲劇の英雄を買って出ようなんて、そんなこと私が許すわけないよね?
美弥は顔を上げた。
空っぽだった心の暖炉が、ぼっと音を立てて燃え始める。
与崎は美弥を助けてくれた。
海で溺れたときも、風邪で過呼吸を起こしたときも。
……その恩に、自分はまだ報いていない!
「……まだまだ、終わらせないからね」
何事も、やられっぱなしじゃ気が済まない。
それが美弥の性格なのだから。
ヒビだらけの鏡に、美弥の顔が映る。
どす黒い怒りの笑みを浮かべながら、美弥の脳裏にはたぎるような炎がちらついていた。

