落ちこぼれ悪魔の扱い方

灰田が迷惑そうに美弥を一瞥した。

「困ったなー。……でもま、仕方ないっすね。行きますよ先輩」

灰田は美弥に構わず、与崎の腕を引っ張って全身鏡まで連れて行く。

「美弥、離せ、頼むから」

切羽詰まった様子で与崎に言われても、美弥は駄々っ子のように引きずられたまま絶対に手を外さない。


このまま魔界に連れ去られてもいい。


美弥はざらついた脳裏でぼんやりとそんなことを考えた。


「美弥!」

与崎の怒声が聞こえる。

いつの間にか、灰田は与崎を掴んだまま屈んで鏡に半身を潜らせていた。


「美弥、怪我するから!」

与崎が大声を上げながら、鏡の中へと引き込まれていく。


しかし美弥は手を離せない。


震える手元は、しかしながら病的に与崎の腕をがっしりと掴んでいた。


与崎が舌打ちし、美弥の手を引き剥がしにかかる。

狂気の力がこもった指先が、ほんの少し緩んだ。


与崎はその瞬間を見逃さず、美弥の手を振り払った。


与崎……。


美弥の唖然とした表情を、与崎はじっと見つめる。

その唇に、ゆっくりと寂しげな笑みが浮かんでいった。