与崎はスーツに着替えてから部屋を出てきた。
廊下で待っている美弥を見つけるなり、与崎は、
「先部屋行けって言ったろ」
と冷たく言い放つ。
冗談じゃない。
あんな悪魔と二人きりなんて、絶対に嫌。
美弥がぶんぶんと首を振ると、与崎は「まあどっちでもいいけど」とぶっきらぼうに言った。
部屋に入ると、悪魔は勝手に美弥のベッドに腰かけていた。美弥は顔を引きつらせる。
本当、最低。
「あ、ひと……よざき先輩」
悪魔はひらひらと手を振り、ベッドから降りる。
「すいません。本名、言っちゃいました」
与崎は顔をこわばらせたまま何も言わない。
悪魔は「そんな怒らなくてもいいじゃないっすかー」と気の抜けた口調で言う。
「……灰田。何の用だ」
与崎は低い声で尋ねた。
灰田と呼ばれた悪魔は、飄々とした様子で答える。
「決まってんでしょ? 引き継ぎっすよ」
引き継ぎって、何。
まさか、これからこいつに面倒見てもらえってこと?
否定してほしくて与崎を見つめたが、与崎は渋い顔をして言った。
「……思ったより、早かったな」

