与崎はベッドに寝転がっていたが、美弥の剣幕を見ると目を皿のように丸くした。
「ノックくらいしろよ」
呑気なことを口走る与崎を、美弥は静かに見下ろす。
「与崎。……いや、ひとみ?」
その言葉を聞くと、与崎はがばっと身を起こした。
「お前、どこでその名前聞いた!?」
そう言って与崎は美弥の両肩をがしっと掴む。
顔は血の気が引いて、氷山のように真っ白だった。
その勢いに、思わず美弥の方がたじろいでしまう。
「さっき部屋に悪魔が入ってきて、与崎を呼んでくれって……」
美弥は震える声で伝える。
「ねえ、どういうこと? 何があったの? なんで私の部屋に悪魔がいるの?」
与崎は美弥の質問には答えず、ただ辛そうな表情で口を引き結んでいた。
与崎の指がぎりぎりと肩に食い込み、美弥は顔をしかめた。
それでも与崎は手を離さない。
ひたすら目線を左右に泳がせ、玉のような冷や汗を額に浮かべている。
「……先、部屋戻ってろ。俺もすぐ行くから」
永遠のように感じた沈黙の後、与崎はそれだけ呟いて美弥から手を離した。

