落ちこぼれ悪魔の扱い方

「君が鏡をこんな風にしちゃったから、魔界から直接移動できなくて困ったよ。仕方ないから依頼人と契約が切れた後、人間界の鏡からここの隣の部屋の全身鏡に移動して……」

「何の用ですか」

美弥がきつい口調で言うと、悪魔はへらへらしながら「あー、そうだね」と間延びした声で呟いた。


「ひとみ先輩に用があって来たんだけど。呼んでもらっていい?」

「ひとみ先輩……?」


誰それ、ひとみって。


美弥が固まっていると、悪魔は「あ、そーだった」と手を打った。

「先輩、依頼人には名乗らない主義だったね。どうりで伝わらないわけだ」

悪魔はベールからはみ出した茶髪をいじりながら、「今の聞かなかったことにしといて」と笑った。


「君が呼び出した悪魔。なんて呼んでんの?」

美弥は唖然としつつ、ほぼ条件反射で「与崎」と答える。


「ふーん。じゃ、その『よざき』って人呼んでくれる?」


悪魔が言い終わらないうちに、美弥は弾かれたように部屋を逃げ出してしまった。

そのまま一目散に父の部屋へと飛び込む。