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玄関を開けると、与崎は靴を脱いですぐに自分の部屋へ入ろうとする。
「お昼どうする?」
美弥が声をかけると、与崎は廊下の奥から首を伸ばして美弥を見た。
「任せる」
それだけ言い残し、与崎は自室へと消えていった。
無愛想で言葉が少ない、いつも通りの与崎だ。
美弥はほんのちょっぴり安心した。
さて、お昼をどうするか。
それよりまず部屋着に着替えようと思い、美弥は自分の部屋のドアを開けた。
「!!!」
美弥は思わず息を詰まらせる。
部屋の中央に、長身の男が立っていたのだ。
一瞬『真珠の環』の刺客かと身構えたが、よく見るとそいつは顔をベールで覆っている。
服装も黒いスーツに、黒いネクタイ。既視感しかない。
「悪魔……?」
美弥の問いかけに、男は喉を低く鳴らす。
笑っているようだ。
「そ。驚かせてごめんね?」
悪魔は軽く答えた。
初対面の与崎を想起させるような、甘い声。
警戒する美弥をよそに、悪魔は「ここまで来るの、大変だったんだよ?」とまた低く笑う。
それから全身鏡の前に移動し、その表面を指先でちょいちょいとつついた。

