落ちこぼれ悪魔の扱い方

父は終始手伝おうとはせず、味見すらしなかったが、焼き上がったチョコレートタルトを見て一言、

『今度教えてくれ』

とだけ美弥に言った。

そのとき何となく、奇妙な胸の高鳴りを感じたのを覚えている。

頼られたのが嬉しかったのだ、きっと。


その後父の日にお菓子作りの本をプレゼントすると、父は試行錯誤しながらも本当にお菓子作りをマスターしてしまった。

誕生日には父手製のケーキが振る舞われたが、悔しいことに舌を打つ美味しさだった。

おかわりまでしてケーキにがっつく美弥を、父は少し誇らしげな眼差しで眺めていた。


好奇心旺盛で、勉強熱心。

仕事で忙しかったはずなのに、何事にも本気で取り組む人だった。


……それが仇となって、死んでしまったのだけれど。


「それよりお前、父親のことはどうだ?」

与崎に声をかけられる。

「ここに来たのも、それを知るのが目的だったろ」

「うん。今まさに、それを考えてたところなんだけど」

美弥は答えた。


びっくりするほど正確な、見透かしているかのようなタイミングだ。