与崎は悪魔だ。死後を一度体験している。
でも悪魔って結局何なのだろう、と美弥は思った。
そう、与崎は一度死んでいる。
お墓もあるだろう。
遺骨はその中で眠っているはずだ。
与崎がこの世界に存在した証のように。
でも、与崎はここにいる。
人ではなく悪魔として、何故か甦ってしまった存在。
美弥は何の気なしに与崎の手を取った。
突然のことに、与崎がびくりと身をすくませる。
「何?」
与崎の質問には答えず、美弥は与崎の手を手袋越しに揉んでみた。
ちゃんと硬い、男の人の手だ。
ぐにぐにと手を揉まれ続けていた与崎は、ぞっとしたように美弥の手を振り払う。
「本当、何? 気味わりいな」
「ごめん。悪魔も骨はあるのかなって、急に思い付いちゃって」
「骨?」
「そう、骨」
与崎は自分の手を確かめるように触る。
「……そんなこと、考えたこともなかったな」
「でしょ? 悪魔になってから、なんか違和感とかないの?」
「怪我とか体調不良はなくなった。血も出ない。
でも痛みは感じるし、体も普通に動かせる。生きてた頃と、あんまり変わりはない」
「そっか」
軽く返答すると、与崎は拍子抜けしたように目をしばたたかせたがすぐに化石に目を戻した。

