次の展示コーナーで、美弥は地獄を見た。
四方八方を埋め尽くす虫の標本。
虫嫌いな美弥にとっては、気持ち悪いの一言に尽きる。
早足で通り抜けようとしたのに、あろうことか与崎はあちこちで足を止めている。
興味深そうに標本を覗き込む与崎に、美弥は『頼むから早くして』と念を送った。
小さなクモ一匹出ただけで大騒ぎの美弥だ。
どこを向いても虫に目が行ってしまうこの状況は、もはや拷問に等しい。
「おい、美弥、見てみろよ。この蝶なんか結構綺麗……」
「そっかよかったね、早くしないと全部見回る前に日が暮れちゃうよ」
「いや、そんなに急がなくてもよくねえか」
美弥は俯いてひたすら床を見つめていたが、その床にも虫のシルエットが描かれていたので視線を上へと向けた。
「お前、もしかして虫怖いのか?」
「怖いんじゃなくて嫌いなの」
「同じようなもんだろ。家に虫出たときとかどうしてたんだ?」
「窓開けて放置。後はゴキブリホイホイ使ったりとか」
「もちろん定期的に取り替えてるよな?」
「……」
「パンドラの箱かよ」
与崎に突っ込まれる。

