「どうして、こんなことになったんだろう……」
美弥の目の前には、黒い布が被せられた全身鏡が鎮座している。
だが黒い布は引き裂かれ、鏡の上半分はひび割れて所々破片が失われていた。
鏡の下半分はもっと酷い。
枠はあちこち歪み、細かい破片が部屋中に飛び散っている。
まるで、強い力で内部から引きちぎられたようだった。
唖然とする美弥の脳内に、この数週間の記憶が何度も甦ってくる。
初めて彼に出会ったときのこと、彼の素顔を見た日のこと、彼が笑ってくれた瞬間のこと、その全てが映画のように。
美弥は冷たい床に突っ伏し、声にならない呻き声をあげた。
しかしそれも一瞬のことで、美弥はまたすぐに顔を上げる。
「……まだまだ、終わらせないからね」
ヒビだらけの鏡に、美弥の顔が映る。
いつも通りの笑顔を浮かべたつもりが、その顔はどす黒い怒りに染まっていた。

