落ちこぼれ悪魔の扱い方

美弥の言葉を聞くなり、与崎は真剣な表情に切り替わる。

「だったら行くしかないな。お前にとっちゃ大事なことだろ」

「与崎にとっても、ね」

美弥が訂正すると、与崎は怪訝そうな顔をした。

美弥は「だってそうでしょ?」と口を尖らせる。

「私が幸せになれば、与崎は解放されるんだから」


与崎は一瞬視線を泳がせた後、「……そういうことか」と頷いた。

「じゃあお前も頑張って父親のこと思い出せよ。そのちっぽけな頭に鞭打ってな」

「小顔ってこと? ありがとう」


そのとき、背後から微かな冷気を感じた。

和やかな雰囲気とは不釣り合いな、不穏な空気が肌に刺さる。


美弥がびっくりして振り返ると、何のことはない、リビングのドアが開いていただけだった。

「どうした?」

急に静かになった美弥に、与崎が声をかけてくる。

「なんでもない」

美弥は与崎に向き直り、笑顔で答えた。


気のせいだと思う。

廊下に目をやったとき、自分の部屋の方から黒いモヤのようなものが見えたのは……。