あの後、美弥は目覚まし時計で殴ってしまったことを悪魔に詫びた。
「ごめんなさい。台詞が胡乱で気持ち悪いからって、本気で殴ることはなかったよね。……怪我とか、してない?」
「まあ、さっきのは俺も悪かった。いきなりあんなこと言われちゃ、普通パニックになるよな。真顔でぶん殴ってくる奴は初めてだったが」
悪魔は不服そうに「ってか、気持ち悪いって何だよ、気持ち悪いって」と付け加えたが、美弥はとりあえず許してくれたものだと判断した。
「ところで、俺もう部屋動いていい?」
悪魔の声で、美弥は我に返った。
「あっ、うん、大丈夫。廊下出て、突き当たりのドア開ければリビングだから。私割れた鏡片付けてから行くから、先行ってていいよ」
そう言って鏡に駆け寄ると、既に破片は一ヶ所に集められていた。
美弥は首をかしげた。
確か、もっと飛び散っていたはずなのに。
「あ、破片は一応拾っといたから。後は新聞紙か何かで包んで捨てといてくれ」
悪魔が平然として言う。
まるで、天気の話でもするような口ぶりだった。
「え、なんで?」
美弥が尋ねると、悪魔はきょとんとした声で「は?」と聞き返した。

