落ちこぼれ悪魔の扱い方

「まあ、とにかく冷やしとけ」

そう言いながら与崎はまた部屋を出ていき、氷嚢を持ってきた。

「二往復もご苦労様」

美弥がねぎらうと、与崎は肩をすくめて「お気遣いどうも」と気のない返事をした。


「それより、そろそろ飯食わないとまずいだろ。お前誘拐されてから飲まず食わずだよな?」

「海の水飲んだよ」

「あれは水分補給じゃねえ!」

与崎はぴしゃっと言うと、「薬も飲まないといけないだろうし……」と思案する。

「とにかく、簡単に何かつくってやるから。それまでジュースでも飲んで待ってろ」

いつの間に持ってきていたのか、与崎はリンゴのジュースを美弥に差し出す。

「飯できたら持ってくる。冷蔵庫の中のもの使っていいか?」

「それは構わないけど。……あ、私ピーマンと玉ねぎとグリーンピースと煮魚と納豆ダメだから」

「嫌いなもの多いな」

与崎は少し笑うと、「何かあったら呼べよ」というお馴染みの台詞を残して部屋を去っていった。


「お気遣いどうも、か……」

静寂が舞い戻ってきた部屋で、美弥は小さく呟く。

「それって、こっちの台詞だよね」

謙虚というか何というか、与崎の親切には押し付けがましさがあまりない。

でも忘れてはいけない。与崎は、悪魔だ。

友人でも恋人でも、もちろん家族でもない。


……甘えすぎないように気を付けないと。


美弥は決意したが、かといって病人が動き回れるわけもないのでじっとしていた。