「はっ……ふ、はっ」
息が吸えない。
美弥はその場に崩れ落ちる。
床についた手から、涙のように冷や汗が滴った。
酸欠の脳がくらくらしてくる。
そういえば、夢でもこんな目に遭っていた。
首を絞める手を振りほどくこともできず、されるがままになっていた美弥。
独りでも大丈夫。
普通に扱ってもらって大丈夫。
私はか弱くなんかない。
そう自分自身に、何度も何度も言い聞かせていた。
それなのにこの醜態はなんだ。
不注意で拐われ、悪魔に弱音を吐き、看病までしてもらう始末。
おまけに一人じゃ呼吸もできないときた。
これ以上の屈辱があるか。
美弥は弱い。
乳離れしていない赤子みたいに弱い。
放置されたウサギみたいに弱い。
しゃくり上げるように歪な呼吸をしながら、美弥はみじめに笑った。
常に笑顔で、人に弱みを見せない。
周囲からの助けなんて必要としない。
それくらい必死に足掻いて、なんとか普通になれたのに。
失敗したのか。結局、私は……。
目の前が暗くなりかけたその時、ガチャッとドアが開く音がして、外の日差しが細く玄関に差し込んできた。

