落ちこぼれ悪魔の扱い方

小さめだが、がっしりした男の人の手。

美弥は鏡から伸びる謎の腕の右手首に、時計がはめられていることに気付いた。太いシルバーのベルト。

そういえば父の日に、こんな時計を送った気がする。


美弥はたじろいだ。

身はこわばり、足はすくみ、とても逃げられるような状態ではない。

固まっている美弥の細い首を、謎の腕が両手で掴んだ。


「思い出してくれ、全てを」


そのまま首を絞め上げられ、美弥はもがく。

必死に首を絞めている手を引っ掻くが、一向に緩む気配はない。


父の声、謎の腕、減っていく酸素。

圧迫された動脈がどくどくと脈打ち、頭は破裂しそうなくらい痛む。

金魚のように忙しなく開閉する口から、泡が吹き出た。


酸素不足の脳内で、美弥はひたすら父に問いかける。


親父。親父は結局私のこと、どう思ってるの?


幸せになってほしいの?

それとも、同じ苦しみを味わってほしいの?


徐々に頭の回転が鈍ってくる。

激しい苦痛の中、美弥の意識はなすすべもなく遠のいていった。