すぐには意味を理解できず、美弥は「ん?」と首をかしげる。
なんで親父がそれを知ってるんだ?
「知らないと思ってたのか?」
美弥の疑問を見透かしたのか、冷たい雰囲気で父は吐き捨てる。
一変した声音。
さっきまでの緩やかな声とは、似ても似つかない。
もう少しでこぼれそうだった美弥の涙は、一瞬で乾いた。
変わりに、不気味な悪寒が美弥を襲う。
「あ、あの、親父? もしかして怒ってる?」
美弥の声はまた小刻みに震え出した。
父はそんな美弥を嘲笑し、「怒ってたのはお前の方だろ」と残酷に切り返す。
「クソ親父とか、大っ嫌いとか、まあ色々言ってくれたな。お前にとって父親なんか、その程度の存在だったってわけか」
「いや、それは……」
「ここまで育ててやったのは誰だと思ってるんだ、ええ?」
父は美弥の言葉に耳も傾けず、ひたすら怒りをぶつけてくる。
違う。父は、こんなこと言わない。
これは全部、美弥の妄想だ。
分かっていても、情けないことに震えが止まらなかった。

