落ちこぼれ悪魔の扱い方

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美弥は真っ暗な場所にいた。


またこれか。

美弥は内心うんざりしながら辺りを見回す。 


遠くにぽつんと、小さな灯りが見えた。

夢の中の美弥は、自分の意思とは無関係にその灯りを目指す。

誘蛾灯に導かれる羽虫のように。


近づくにつれて、灯りは徐々に大きくなっていく。

美弥は、その灯りの中にあるものの影を見出した。

美弥は目を細めて、それが何か判別しようとする。


「鏡……?」


黄色い灯りの中に、自立式の全身鏡が鎮座している。

その表面には真ん中から裂けた、黒い布がかけられていた。


美弥の足は勝手に動き、鏡に向かって歩き続ける。

鏡までたどり着くと、美弥はほぼ無意識にかけられた布をめくった。


鏡は、割れたり曇ったりしていない。歪みもない。

ちゃんと目の前のものを映すはず。


……それなのに。


「なんで、親父が映ってるの……?」

美弥は小さく震える声で呟いた。

心臓がどくどくと音を立てる。


鏡に映っているのは美弥ではない。

ビシッとした仕立ての良いスーツ、整髪料で固められた黒髪、どんな表情を浮かべても消えない眉間の皺。

間違いなく、見かけは父だ。


……でも、これは父じゃない。

美弥はそう直感した。