与崎が冷却シートと体温計を手に戻ってきた。
濡れたスーツも着替え、今はまたパーカーを着ている。
「お前また散らかしただろ。体温計とか探すの大変だったぞ」
与崎は毒づきながら、美弥のベッドの隣に腰を下ろす。
そして手に持っていた冷却シートを袋から取り出し、容赦なく美弥の額に貼り付けた。
急な冷たさに美弥は思わず「うっ」と呻く。
憎らしいことに与崎は全く気に留めていないようで、涼しい顔をしていた。
「次、体温な」
素っ気なく言い、与崎が体温計を差し出してきた。
口で測るタイプの体温計だ。
美弥は黙って口を開ける。
与崎は「?」という表情をしていたが、すぐに察したのか一瞬で顔を紅潮させた。
「俺がくわえさせろってか!? バカ、体温計くらい自分で持て!」
ひどい。言い返せないのをいいことに、病人を罵倒するなんて。
……まあ、ウブゆえの態度ってことは分かってるし、ここは黙っておいてやるか。
そもそも声出ないし。
美弥がもどかしい気分で軽口を飲み込もうとした時、突然口の中に体温計を差し込まれた。
喉まで突っ込まないように慎重に、でもちょっとぶっきらぼうで雑に。

