落ちこぼれ悪魔の扱い方

「冷却シート持ってこようか?」

与崎に尋ねられ、美弥は掠れた声で答える。

「お願い。リビングのタンスの、一番上の段に入ってる」

「了解。……ただ、俺も先にシャワー浴びてきていいか?」

「いいよ」

「悪いな。すぐ戻ってくるから」

そう言うと、与崎は廊下へと消えていった。


体調を崩すなんて何年ぶりだろう。

確か、父が死んだショックで寝込んで以来だ。


父がいた頃は看病してもらっていた。

病院に連れていったら後は放置、ということはあまりなかった。

仕事も休んでくれた。

父だって、忙しかっただろうに。


一番覚えているのは四年前、インフルエンザにかかった時だ。

熱せん妄が酷くて気持ちの悪い幻覚__多分虫にたかられるとか、そういった類い__を見て大泣きし、心配した父はインフルエンザが治った後もしばらく家にいてくれたのだ。

普段構ってやれなかったので、ストレスが溜まって幻覚を見たと思ったらしい。


「寂しいわけないでしょ。むしろ一人の方が気楽でいいし」

照れ隠しに冷たい態度をとってしまったが、本当はすごく嬉しかった。

なんでもっと素直になれなかったんだろう、と今でも後悔している。