結局一時間近くかけて、美弥と与崎は家に帰ってきた。
与崎に鍵を渡して開けてもらい、美弥は千鳥足で家に入る。
靴下を脱ぎ、タオルで足を拭いている与崎を尻目に自室に直行しようとすると、与崎に「待て美弥」と呼び止められた。
「まず風呂入ってこいよ。海に飛び込んだの、忘れたか?」
「だるい」
げっそりした表情呟くと、与崎は「それも分かるけど」と浅いため息を吐く。
「後で布団洗う方がだるいだろ。体温計とか探しとくから、その間にシャワー浴びて着替えとけ」
与崎は言いながら自分の濡れたネクタイを外し、スーツのボタンに手をかける。
「玄関で脱がないで、自分の部屋行って」
美弥はそれだけ言い残し、脱衣所へ向かう。
バスルームの鏡に全身を映すと、足首に何かの海藻が張りついていた。
髪からも潮っぽい匂いがする。
美弥は重たい体に鞭打って体と髪を洗い、適当に髪を乾かして寝間着に着替えた。
そのままフラフラした足取りで自室のベッドに倒れ込む。
死んだように動かない美弥を、いつの間にか与崎が部屋の入り口から覗いていた。

