これは……看病してもらえるやつでは?
さんざん強がっていたくせに、どうしても期待がこもってしまう。
与崎は目が合うと、ニヤッと嫌味な感じの笑顔をつくった。
「病院行けば? 他の患者に囲まれてりゃ独りじゃねえだろ」
「……」
美弥は力の入らない拳で与崎の胸を弱々しく叩く。
与崎は「嘘だから」と少し申し訳なさそうに言った。
「看病するから。お前さえ良ければ、だけどな」
「ありがとう」
美弥のがらついた声を聞いて、与崎は表情を一変させる。
「もう悪化したのか?」
「まだ大丈夫。……ただ与崎、さっきからなんか意地悪だね」
「お前の態度もこんな感じだったぞ」
与崎はそう言い放つと、視線をちょっと後方にずらした。
「雨降りそうだな」
美弥は空を見上げる。
さっきまでは澄みわたっていた空に、ずっしりとした灰色の雲が迫ってきていた。
「天気崩れる前に、帰るか」
与崎はそう言って美弥の手を取る。
その大胆さに、美弥はちょっと驚いた。
手袋越しではない、与崎の体温を感じる。

