落ちこぼれ悪魔の扱い方

美弥はたまらずその場で嘔吐する。

仰向けに寝かされていたので、吐瀉物が喉に逆流しそうになる。

「おっ、おい馬鹿っ! 横向きになれ、横向き!」

男が慌てて美弥の肩を掴み、無理矢理横向きの体勢にさせた。

吐瀉物が口から吐き出され、砂だらけの地面へとこぼれる。

おかげで美弥は窒息せずにすんだが、不可解なことに吐いたのはほぼ水だった。


「……げほっ」

吐き気は治ったが、代わりに咳が止まらなくなった。

「げほっ、ごほっごほ」

「今度は咳か? 大丈夫かよ」

男は不慣れな手つきで美弥の背中をさする。

男も美弥も全身びしょ濡れであることに、美弥は今さら気づいた。


呼吸ができないくらい咳をし、残った水を吐き出す。


ある程度咳が治まると、美弥はまた仰向けに戻る。

そして改めて、自分を見下ろす男と対面した。


年齢は20代前半といったところか。

切れ長の目が印象的な、落ち着いた顔つきだった。

高くはないが筋の通った鼻に、血色はあまり良くないが薄い唇。

美男子とまではいかなくとも、整った顔立ちではある。


しかし何よりも目を引いてしまうのは、右の頬にある火傷痕だ。

かなり昔のものだろう。

薄くなってはいるが、肌が色白なせいで少し傷が目立って見える。