そのときだった。
掛けてあるカーテンが、モゾリ、と動いた。
美弥は冷水を浴びせられたように硬直する。
カーテンの向こうに、誰か、いる。
「……え、え。嘘、マジ? マジなの?」
覚悟はできているつもりだった。つもりだったが……。
__やっぱり怖い。
美弥はカッターを拾い上げたが、刃が折れていたので使い物にならない。
「どうしよう、どうしよう、うわー、マジで来るとは……」
美弥はカッターをその場に放り捨て、頭を抱えた。
そうだ、護身だ。何されるか分からないんだから、何かで身を守らなきゃ。
美弥は内心取り乱しつつ、枕元の目覚まし時計を取りに走る。
目覚まし時計を取り上げて振り向くと、カーテンは人が隠れている時のように膨らんでいた。

