こんな状況なのに、目の前の景色を美しいと感じた。
紅と藍を融け合わせながら世界を優しく包み込む、広大な空。
揺らめく鏡のように二つの色彩を映し出す、壮大な海。
水平線の向こうから顔を覗かせる朝日が、一筋の煌めきを美弥に送ってくる。
その光は、砂漠のような美弥の心を穏やかにくすぐった。
「死にたくない……」
ぽつりと、みじめな呟きがこぼれた。
女は決まり悪そうに顔を逸らし、男は美弥を掴む手に力を込める。
逃亡を警戒しているのかもしれない。
美弥にそんな気力は、残っていなかったが。
どうしてこうなったんだろう。
親父が教団に介入しすぎたせいかな。
それとも復讐したいなんて願ったから、バチが当たったのかな。
……いや、元からこうなる運命だったのかも。
ごめん咲子、と美弥は心の中で謝った。
もう話したりできないし、一緒にバイトもできない。
その上これからは二人組をつくるとき、咲子が独りぼっちになってしまう。
美弥の脳裏に与崎の姿が浮かぶ。何故か、彼にも無性に会いたいと感じる。
会って、その不器用な立ち振舞いで今すぐ癒されたい。
また二人でどこかに行きたい。

