落ちこぼれ悪魔の扱い方

「そろそろ目的地だ。安藤、逃げられないようにしっかり押さえていろ」

安藤と呼ばれた男は「はいっ」と兵隊のような返事をして、美弥の肌すれすれまでナイフを近づける。

美弥はナイフからできるだけ距離を置くため、ヘッドレストにもたれかかった。


やがて車が停止し、男がキーを抜いて車を降りる。

美弥と二人も後に続いた。


山の中の、少し開けて木が少ない場所。

そんな場所を、美弥は三人に囲まれて歩いていた。


人気のない山には、もう明け方が訪れていた。

空の端の辺りが、溶け残った夕焼けのように赤く染まっている。

鳥の鳴き声と風の音に混ざって、波の音が聞こえてくる。


海が近い?


そういえば潮の匂いがする。

風も強い。いや、風は家を出た時から強かったけど。


ということは、海に投げ込まれて溺死か。父と一緒だ。


美弥の予想通り、歩いた先には海が見えてきた。

一つ意外だったのは、海が切り立った崖の下に広がっていることだけ。

崖の高さは10メートルくらい。

何メートルも上から水に落下すると水面がコンクリートのように固くなるとか何とか聞いたことがあるが、カナヅチの美弥には関係ない。

海で溺れて死ぬか、頭をかち割られて死ぬかの違いだ。

美弥は諦め、投げやりな視線を海へと向けた。