待望の鏡が届いたのは、日曜の夕方だった。
取るに足らないようなバラエティをあくびをかみ殺しながら見ていた時、チャイムが鳴った。
また幻聴かと思いつつも一応インターホンを見ると、小太りの配達員が大きな段ボールを抱えて立っている。
やっと来たか。
美弥は安堵し、応対するのも忘れて「はあぁぁぁ」と長いため息を吐いてしまう。
この生活が終わると思うと、配達員がメシアに見えた。
もう一度チャイムが鳴る。
美弥は今行きますと慌てて返し、印鑑を掴み玄関へ走った。
「中まで運びましょうか?」
巨大な段ボールを見て配達員は聞いてきたが、美弥は断った。
部屋が散らかっているのだ。
与崎が片付けてくれた部屋も、ものの二日で元通り。
四日間一緒に暮らしていた割には、与崎がいた痕跡はほぼ消えかけている。
そういうわけで美弥は一人で段ボールを開封し、新品の全身鏡と対面した。
「あちゃー、キャスター付きじゃないやつ買っちゃったか」
説明もよく見ずに急いで買ったから、仕方ない。
美弥は鏡の台座を組み立て、父の部屋の前まで全身鏡を引きずっていく。

