自分でも驚いたことに、何故かいつもの笑顔を浮かべていた。
「明後日には、鏡届くと思うから」
明るい声も、自分で意図したものではない。
心ではないどこかが、美弥の体に勝手に命令しているのだ。
笑うように、明るく言うように。
感情なんてお構いなく、病的に。
与崎はそんな美弥をじっと見ていた。
表情は分からなかったが、怒っていたのかもしれないし、哀れんでいたのかもしれない。
もしかすると、怯えていたのかもしれない。
「……一つだけ訊いてもいいか」
「何?」
与崎は一呼吸置いてから尋ねる。
「どうして、直接殺すことにこだわったんだ」
美弥は相変わらずの笑顔で、「ああ、それはね」と説明する。
「実行犯にも復讐するため。私、真名川を殺したら自首しようと思ってたの。
それで実行犯も含めた信者に、『あんたらが信じてた預言者とやらは、こんなごく普通の女子高生に殺されるような脆い人間だったんだよ』って、思い知らせてやりたかったんだ」
美弥は一息に話し、その後で「でもやっぱり、自首はやめる」と付け加えた。
「少年院って、厳しそうだもんね」
美弥は朗らかに笑う。
与崎は「そうか」と力なく呟き、リビングを出ていった。
ガチャッとドアが閉まる音を最後に、美弥の激情と父の記憶は再び封印された。

