ようやく体調がマシになった。
美弥は与崎の手を払い、壁に手をつきながら何とか立ち上がった。
与崎は遠慮がちに近寄ってくる。
「美弥、その……本当に悪かった。俺のせいだよな、ごめん」
「本当にね」
美弥はニコりともせずに言った。
与崎のおどおどした態度も、今は頭にきた。
「にしても、まさか真っ先に思い出すのが親父のどざえもんだったとはね」
「どざえもん?」
「水死体のことだよ」
思い出してしまったのは、死体のことだけではない。
今までの生活のことも、断片的にではあるが甦ってきた。
父は、何も考えず憎しみをぶつけられる相手ではなくなってしまった。
与崎のせいで。
美弥は握り締めた写真に目を落とし、ぽつりと呟いた。
「これ、捨てるか」
美弥は写真を切り刻もうと、机の上にあったハサミを取り上げる。
与崎は非難するような声で「美弥」と言ったが、美弥が返す視線は冷たいものだった。
「だって、仕方ないじゃん。これ見る度にああなってたんじゃ、とても身が持たない」
そう言っても、与崎は何も答えない。
与崎の視線がベールを貫いて光っているように見えて、美弥は小さく舌打ちした。
お互い睨み合っていたが、しばらくして与崎が呻くように呟いた。

