向こうで与崎が何か喚いていたが、よく聞こえなかった。
水中にいるみたいに音が遠く感じる。
不意に蝋人形のような父の水死体が脳裏をよぎり、美弥は口元を押さえる。
フローリングの冷たさすら気持ち悪い。
胃の中身を揺さぶられるような感覚がして、美弥は薄く目を開ける。
案の定、与崎が美弥の肩を掴んで揺すっていた。
『安静にさせる』という概念は彼の頭にはないらしい。
「美弥! おい、大丈夫か?」
頭痛が悪化するから、至近距離で大声出さないでよ__。
美弥の言葉は声にならず、暗幕を引いたように視界が狭窄してくる。自分の咳き込む声だけが脳内に響く。
吐き気と頭痛が治まるまで、美弥は与崎のありがた迷惑にひたすら耐えなければならなかった。

