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美弥は玄関のドアを開け、「ただいまー」と呟く。
「お、お帰り」
部屋の奥から聞こえてきた声に、美弥は小さく笑みを浮かべた。
三日目にもなれば、与崎の反応にも慣れたものだ。
「今まで防犯のために言ってただけだから、やっぱり返事が返ってくるっていいよね」
上機嫌に言いながらリビングに入ってきた美弥は、凍りついたように足を止めた。
部屋は空き巣と酔っ払いと幼稚園児が徒党を組んで乱入したかのように散らかっていたが、美弥はそんなこと気に留めていない。
美弥を唖然とさせているのは、与崎が持っている写真だった。
制服を着た少女と、その襟元を直す父親らしき男性が写っている。
美弥と、父だった。
「どこで見つけたの、それ」
普段のあっけらかんとした明るい声は出せず、どうしても動揺が表に出てしまう。
与崎はしどろもどろになりながらも、「いや、物入れの奥の方で見つけて」と弁解している。
美弥は与崎の話を半分も聞かず、「貸して」と言って写真を奪い取った。
「これは多分、中学の入学式の……」
父の顔は仏壇の写真とそう変わらない。
美弥に似て色白で、彫りの深い綺麗な顔をしている。

