今度は美弥が驚く番だった。
「反対しないの?」
「反対してほしかったの?」
「いや、そうじゃないけど。なんか意外だなって」
素直な咲子のことだから、『人を騙すなんて』と反発するだろうと思っていた。
咲子は「意外って」とちょっと笑った後、真剣な表情で続ける。
「まあ、どんな嘘かにもよると思うけど。一概に悪いことだとは思えないんだよね」
「そうかな?」
「うん。あんまりにも悪意ある嘘ついてなければ、大丈夫なんじゃないかな?」
美弥がしたことは復讐の目的を偽っただけ。
あんまりにも悪意ある、とは言いがたいものだろう。
美弥は口元に微笑を浮かべた。
「ありがとう。なんか元気出たかも」
「本当? 良かったぁ」
咲子は純粋に喜んでくれた。
「嘘の件は、美弥ちゃん気にすることないと思うよ」
念を押すように言われ、美弥は頷く。
ほんの気休めだろうが、別に構わない。
理解してもらえたことだけで十分だった。
「じゃあ私、帰るね。またね咲子」
「あ、うん、じゃあね。ちゃんと寝なよ!」
咲子は慌てたように言って、ひらひらと手を振る。
美弥もそんな咲子に手を振り返しながら、学校を出た。

