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「貧血ね。今日はもう帰って、病院行った方がいいと思うわ」
保健室の先生はそう言うと、ついてきた咲子に美弥の荷物を持ってくるように言った。
咲子が出ていくのを見計らって、先生は美弥に尋ねる。
「睡眠不足だったっけ? 昨日の怪我も不注意だったみたいだけど、何か悩んでることでもあるの?」
「同居人のことで悩んでます」なんて言うわけにもいかないので、美弥はベッドで横になったまま「いえ」と首を振った。
「えーっと、塾の宿題が終わらなくて」
出任せを言うと、先生は「そうなの?」と眉根を寄せた。
「そんなことなら、早く寝なさいよ。それで勉強に身が入らなかったら、本末転倒じゃない」
「そうですね。気を付けます」
美弥は適当に答える。
まともに聞く気などさらさらなかった。
しばらくすると、ドアが開いて咲子が部屋に入ってきた。
「鞄、持ってきました」
「ありがとう咲子ちゃん。大丈夫だとは思うけど、一応昇降口まで付き添ってあげてくれる?」
「いや、そこまでは……」
「分かりました。美弥ちゃん、鞄持っててあげるね」
美弥の遠慮は軽く無視され、結局咲子に付いてきてもらうことになってしまった。

