「美弥ちゃん、昨日何かあった?」
咲子は、登校して一発目にそう尋ねてきた。
「あ、分かる?」
「クマが酷いよ。パンダみたい」
美弥は手鏡を取り出して確認してみた。
パンダとまではいかないが、確かに黒いクマがくっきりとついていた。
おまけに目は充血しているし、髪は寝癖だらけ。睡眠不足三点セット。
「あんまり寝れてないの?」
「全く寝れてないの」
昨日散歩から帰った後、美弥なりに色々考えていた。
殺人の動機について。
自分のために復讐するのは悪いことではない、とは思う。
問題は、それを与崎に黙っていることだ。
別に、ネコをかぶっていい子ぶりたかったわけじゃない。
成り行きでこうなってしまっただけ。
でも今さら本当のことを言うのもなあ、と美弥は悩んだ。
正直に言って拒絶されるのは嫌だ。
でも、騙したままだと良心が痛む。
明け方近くまでベッドの中で悩み、美弥は結論を出した。
……隠し通す。あくまで復讐は父のためだと思わせておく。
美弥はそう決意した。
決意した頃にはもう朝だった。
二度寝する時間もなかったので、徹夜で学校に来たという次第だ。
まあ、金曜日だし、今日を耐えれば土日だと思って何とかやっていこう。
そう思っていたが、甘かった。
一限前の移動教室の最中に美弥はぶっ倒れてしまい、結局二日連続で保健室送りになってしまったのだ。